2020年、夏、東京、アゼルバイジャンより――オリンピック空手競技で出会う男たち。

何も持たないところへ(梧桐 彰) - カクヨム
2020年、夏、東京、アゼルバイジャンより

いつものあいつに会いに、今日も。

 タイトルとあらすじだけでは、この作品が「未昔堂バトルズ」で紹介されていることに首を捻る方もいそうです。

 ですが、タイトルに「2020年、夏」と入っているところからこれが東京オリンピックを題材にした物語であることは予想がつくかもしれません。

 この作品は、アゼルバイジャンの空手選手のモノローグという形で語られます。

 彼は欧州大会と世界大会で2桁の金メダルを獲得し、ワールドゲームズもイスラム諸国連合競技大会でのチャンピオンという、自他ともに認める「レジェンド」。

 その彼が出会ったある日本人空手選手「ケン」との物語。どちらも実在の選手がモデルになっています。

 競技に臨む選手なら、きっと誰でも持っている渇望。

 「よーいドン!」で技を比べ合い、どっちがより優れているかを決める瞬間。

 アクションものは小説よりも映像の方が向いているのではないか? というのが一般的な認識かもしれません。しかし、この「勝負の瞬間」の心性を描くという意味では、小説より優れた媒体はありません。

 この作品はショートショートで全編モノローグでありながら、それを十二分に表現しきった名作。

 戦う男たちの心の中――それは熱く燃え上がる闘争心だけではないということを、静かに描いたこの文章をぜひ味わってみてください。

なにも持たないところへ
作:梧桐彰
短篇(3,484字)
掲載サイト:カクヨム

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